杏庵の歳時記 寒露(其の1)
今日から二十四節気の寒露(かんろ)です。
朝晩の冷え込みがはっきりと感じられるようになります。
明け方、草や葉に宿る露に触れて、思いがけない冷たさに驚いたことはありませんか?
秋は確実に深まっているのです。
第四十九候 鴻雁来(こうがんきたる)
燕が南へ帰る頃、入れ違いに雁が渡ってきます。遠くシベリア、カムチャツカから海を越えてやってきた雁は日本で越冬し、春の訪れとともに北へ帰っていきます。
清少納言が『枕草子』に
「秋は夕暮(ぐ)れ。夕日のさして山の端(は)いと近うなりたるに、烏(からす)の寝(ね)どころへ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど飛(と)び急ぐさへあはれなり。まいて、雁(かり)などのつらねたるが、いと小さく見ゆるは、いとをかし。日入りはてて、風の音、虫の音(ね)など、はたいふべきにあらず」。
と記したように、隊列を組んだ雁の群れが空高く飛んでいく光景は勇壮であると同時にしみじみとした趣があり、日本人の心を掻きたてます。
この時期から旬を迎えるのは林檎(りんご)
中国のことわざで「りんごを食べると医者いらず」と言われるほど、健康効果の高い果物です。胃腸の働きを高めて消化を促進し、疲労を回復します。また、咳や痰、喉の渇き、下痢などの改善にも効果的です。
不溶性・水溶性の食物繊維を多く含み、血圧やコレステロール値の低下、便秘の改善にも有効。さらに、果皮や果肉に含まれるポリフェノールには、抗酸化作用や老化防止効果が期待できます。
人参と蜂蜜とでフレッシュジュースを作れば、発熱で消耗した体力や発汗で失われた水分を補い、疲労を回復させます。このときのポイントは人参・林檎とも皮付きのままで使いましょう。
硬い林檎が好きな僕としては、この時期に外せないのが「秋映(あきばえ)」という品種のりんご。サンふじと比べるとやや硬さには劣るものの、とても美味しいりんごです。
長野県生まれのオリジナル品種。濃い赤色のりんごで、一目見れば秋映えだとわかるでしょう。長野県『りんご三兄弟』の長男・長女にあたる品種です。